噴火難民

　最大の原因は、噴火難民の流入です。私が読んだ書物は全部、肯定しています。

　中央高原を含むメキシコは、火山の巣です。概ね、一つの火山の噴火は複数回に及ぶため、年代検証は容易ではないのですが、目立った災害をもたらしました。

　紀元前200年〜西暦50年……ポポカテペトルPopocatepetlの複数回の噴火。

　西暦70年……ポポカテペトル大噴火で大量の軽石が降る。

　西暦115年……チチナウツィンChichinautzin噴火。

　西暦275年……シトレXitle火山からの〔クイクイルコ〕への大溶岩流。

　詳細な報告はされていないようですが、大小様々な規模の噴火がほとんど絶え間なく生じていたのではないでしょうか。噴火時の風向きにより、被災する地域も様々だったようです。山の異変を心配しながら生きるが当たり前だったと思われます。

　テオティワカンに間接的に大きな影響を与えたのは、ポポカテペトル火山でしょう。噴火の最古の痕跡は20万年前で、断続的な火山灰の記録があります。西暦70年とも推測される大噴火では、火山灰は南西の風に乗り、広範囲に厚さ1〜3mの軽石の降らせました。
　
　チョルーラとポポカテペトル火山の中央にあるテティンパTetimpa集落の発掘報告がネットに載っています。おそらく１家族の居住複合体として、広くはない広場の奥に最大の建物、両脇に寝室家屋と調理のための家屋が立ち、後のテオティワカンの「三神殿構造」に似ています。上物は泥と枝で作られましたが、石造りの基壇のデザインはテオティワカンの「タルー・タブレロ建築様式」に酷似しています。広場の中央には火山を模した像のある炉が置かれ、「中央祭壇」のようにも見えます。

　広く言われていますが、「三神殿構造」や「タルー・タブレロ建築様式」は、西暦1年以前のメソアメリカのほぼ全土で散見されます。テオティワカンのオリジナルではなかったようです。

　火山北東部の多くの農村が放棄された、と言われています。農民たちはどこへ移ったのでしょうか。

　風向きの戯れか、チョルーラにはこの時の降灰の記録がありません。チョルーラは「選ばれし聖なる地」のイメージを保ちました。そこへの移住がゼロだったとは思えませんが、噴煙を上げ続けたポポカテペトル火山を間近に見える場所は選ばれにくそうです。

　↑at チョルーラ地域博物館。

　噴火被害がそれまで記憶されていないテオティワカン渓谷に多くが移住したがった、と考えられています。